こんにちは。「家族を想うお葬式ガイド」を運営しているKeisukeです。
私は以前、葬儀社のプランナーとして12年間、800件を超えるご葬儀に携わってきました。
ご葬儀は、人生で最も大切な、そして最も心の揺れ動く瞬間のひとつです。大切な人を亡くされた悲しみの中で、さまざまなことを決めていかなければならないご遺族の姿を、私は幾度となく見てきました。
その中でも、「お花」に関するご相談は、特に多く寄せられるものでした。
「どのような花を選べばいいのか？」 「故人が好きだった花でもいいのか？」 「蘭の花は高価なイメージがあるけれど、どうしてよく使われるのだろう？」
お花は、故人様への想いを形にする、特別な意味を持つものです。だからこそ、その選び方やマナーについて、多くの方が悩まれるのだと思います。
この記事では、特に「蘭」というお花に焦点を当て、葬儀で蘭が選ばれる理由や、供花（きょうか）や献花（けんか）としての正しいマナーについて、私の経験を交えながら詳しくお伝えします。
蘭の花が持つ、高貴でありながらも清楚な美しさ。その意味を知ることで、より心を込めて故人様をお見送りするお手伝いができれば幸いです。
また、ご葬儀の準備は、突然訪れることも少なくありません。悲しみに暮れる中で、慌ただしくさまざまな手配を進めなければならないご遺族のために、この記事の後半では、いざという時に役立つ情報もご紹介します。
どうか、この記事が、故人様との最後の時間を穏やかに過ごすための一助となりますように。
1. 葬式に蘭の花がふさわしいとされる理由
まず、なぜ数あるお花の中でも、蘭が葬儀の場で頻繁に選ばれるのでしょうか。
そこには、蘭が持つ「花言葉」や「花もちの良さ」、そして「控えめな美しさ」といった、いくつかの理由があります。
これらの理由を知ることで、故人様やご遺族への配慮がより深まるはずです。
1-1. 蘭の花言葉に込められた深い想い
「花言葉」は、お花が持つ意味を伝える、素敵な文化です。
故人様への最後のメッセージとして、花言葉に想いを託す方もいらっしゃいます。蘭の花言葉は、まさに葬儀の場にふさわしい、深い意味合いを持っています。
代表的な蘭の種類と、その花言葉を見ていきましょう。
- 胡蝶蘭（コチョウラン）花言葉：「清純」「純粋な愛」胡蝶蘭は、その名の通り蝶が舞うような優雅な姿から、多くの方に愛されるお花です。葬儀の場で胡蝶蘭がよく用いられるのは、「清純」「純粋な愛」という花言葉が、故人様の安らかな旅立ちを願う気持ちや、生前の故人様への変わらぬ愛情を表すのにふさわしいからです。また、胡蝶蘭には香りがほとんどありません。これは、香りの強い花が故人様のご供養の邪魔になると考える方もいるため、葬儀の場においては大きな利点となります。
- デンファレ花言葉：「お似合いの二人」「有能」デンファレは、胡蝶蘭と同じラン科の植物で、小さな花が連なって咲く姿が特徴的です。「お似合いの二人」という花言葉は、夫婦として連れ添った故人様への想いを込めて選ばれることがあります。また、「有能」という花言葉は、生前、社会で活躍された故人様を偲ぶ気持ちを表すのに適しています。デンファレも香りが控えめで、色合いも落ち着いたものが多いため、葬儀の供花として人気があります。
- シンビジウム花言葉：「高貴な美人」「飾らない心」シンビジウムは、洋蘭の中でも特に華やかな印象を持つお花ですが、白や淡い緑色の品種は、葬儀の場でも品格を保ちながら華やかさを添えてくれます。「高貴な美人」という花言葉は、女性の故人様を偲ぶ際にぴったりでしょう。「飾らない心」という花言葉は、故人様の素朴で誠実な人柄を偲ぶのにふさわしいものです。
これらの花言葉を知ることで、ただ美しいというだけでなく、深い想いを込めて蘭を贈ることができるのです。
1-2. 圧倒的な花もちの良さ
葬儀は、通夜から告別式、そして火葬まで、数日にわたって行われることが一般的です。
この間、祭壇を飾るお花は、常に美しく咲き続けていてほしいものです。
蘭は、他のお花に比べて非常に花もちが良く、数日から一週間、長いものでは数週間も美しい状態を保つことができます。
これは、葬儀の期間中、故人様との最後の時間を穏やかに、そして美しく見守ってくれるという点で、ご遺族にとって大きな安心感をもたらします。
また、ご葬儀後も、仏壇にお供えする花として、その美しさを長く楽しむことができるのも、蘭が選ばれる大きな理由です。
1-3. 清潔感と品格のある美しさ
蘭の花は、その形や色合いから、清潔感と品格を感じさせます。
特に、白や淡いピンク、淡い黄色の蘭は、悲しみの場にふさわしい、落ち着いた雰囲気を作り出します。
祭壇を彩るメインのお花として、あるいは供花として供えられた蘭は、故人様を偲ぶ静かな空間に、優雅さと温かみを添えてくれます。
また、一本一本が独立して咲く姿は、個性を尊重する現代の価値観にも通じるものがあり、故人様の人柄を偲ぶのにふさわしいと言えるでしょう。
1-4. どんな宗派や形式にも合わせやすい汎用性
葬儀には、仏教、神道、キリスト教など、さまざまな宗教や宗派があります。
そして、それぞれに、お花に関する独自の決まりごとがある場合もあります。
しかし、蘭の花は、特定の宗教色を強く持たないため、仏教やキリスト教、神道など、幅広い宗派や形式のご葬儀で用いられます。
特に、近年増えている無宗教葬や家族葬においても、蘭の持つ上品で控えめな美しさは、故人様との最後の別れの場を温かく演出してくれます。
故人様やご遺族の宗教・宗派がわからない場合でも、安心して贈ることができるお花と言えるでしょう。
2. 葬儀における蘭の役割と正しい選び方
葬儀の場におけるお花には、大きく分けて「祭壇花（さいだんばな）」、「供花（きょうか）」、「献花（けんか）」の3つの役割があります。
それぞれの役割によって、お花の選び方や贈り方、マナーが異なります。
ここでは、蘭の花がそれぞれの場面でどのように使われるのか、そして正しい選び方について解説します。
2-1. 祭壇花としての蘭
祭壇花は、ご葬儀のメインとなる祭壇を飾るお花です。
ご遺族が故人様のために用意するもので、葬儀社のプランナーと相談しながら決めます。
蘭の花は、祭壇花として非常に人気があります。
特に、白い胡蝶蘭やシンビジウムは、その優雅な姿と格式高い雰囲気から、祭壇全体を荘厳に、そして清らかな印象に仕上げてくれます。
他の花材と組み合わせて、故人様の好きだった色や雰囲気を表現することもできます。
【ポイント】
- 祭壇花はご遺族が手配するものなので、故人様との思い出や、故人様らしさを表現するお花を選ぶのが一番です。
- 蘭の花は他の花材とも相性が良く、和風、洋風を問わず、さまざまなデザインの祭壇に合わせることができます。
2-2. 供花としての蘭：贈る際のマナー
供花は、ご遺族以外の親族や友人、会社関係の方が、故人様を偲び、ご遺族への弔意を表すために贈るお花です。
祭壇の両脇や、式場の入り口などに飾られます。
供花として蘭を贈る際は、いくつかのマナーがあります。
【供花を贈る際のマナー】
- 事前に葬儀社に連絡する供花は、ご葬儀の形式や会場の広さ、祭壇のデザインに合わせて飾られます。そのため、必ず事前に葬儀社に連絡し、「供花を送りたい」という旨を伝えてください。葬儀社によっては、供花の手配を代行してくれるところもありますし、指定の生花店がある場合もあります。勝手に手配してしまうと、会場の雰囲気に合わなかったり、飾るスペースがなかったりして、ご遺族に迷惑をかけてしまうことになりかねません。
- 名札の表記に注意する供花には、誰が贈ったものかを示すための「名札」をつけます。名札の表記は、ご遺族への配慮を示す重要なポイントです。
- 個人で贈る場合：「〇〇（ご自身の氏名）」とします。
- 夫婦で贈る場合：「〇〇 〇子」のように連名で記載するか、「〇〇家一同」とすることもあります。
- 会社や団体で贈る場合：「〇〇株式会社 一同」や「〇〇部 有志一同」のように記載します。
- 金額の相場を知る供花の金額は、一般的に1基（いっき）あたり1万円から3万円が相場です。1対（いっつい：2基セット）で贈ることが多いので、その場合は倍の金額になります。あまりに高額な供花は、かえってご遺族に気を遣わせてしまうことがあります。相場を参考に、故人様への想いを込めたお花を選びましょう。
- 蘭の花を選ぶ際の注意点供花として蘭を選ぶ場合、特に人気なのが「胡蝶蘭」です。胡蝶蘭は、その優雅な姿と花もちの良さから、故人様を偲ぶ気持ちを長く届けてくれます。
- 色合い：白が最も一般的で、弔事全般にふさわしい色です。淡いピンクや黄色も、故人様が生前好きだった色であれば問題ありません。
- 鉢植えか、アレンジメントか：供花は、祭壇の雰囲気や会場のスペースに合わせて、アレンジメント（花器に活けられたもの）か、鉢植え（根のついたままのもの）のどちらかが選ばれます。ただし、鉢植えの供花は「根付く」という意味から、「不幸が続く」と捉える方もいらっしゃるため、避けるべきという考え方もあります。ご遺族のお気持ちを第一に考え、葬儀社に相談して決めるのが良いでしょう。
2-3. 献花としての蘭：キリスト教式や無宗教葬での作法
献花は、参列者が一人ひとり、故人様への最後の別れとして、花を捧げる儀式です。
仏式の焼香の代わりに行われることが多く、キリスト教式や無宗教葬で一般的です。
献花に使われるお花は、白を基調とした、茎の長いお花が一般的です。
蘭の花も、献花として用いられることがあります。
特に、白いデンファレや、カーネーションなどが使われることが多いです。
【献花の作法】
- 祭壇に進み、お花を受け取る係の方から、茎を左手、花を右手にして、お花を受け取ります。
- 故人様の方へ一礼する祭壇の前で、故人様の遺影に向かって一礼します。
- お花を置く受け取ったお花を、花が故人様の方に向くように向きを変え、静かに献花台に捧げます。
- 黙祷（もくとう）を捧げる一度遺影に向かって、黙祷を捧げ、故人様との思い出を心の中で語りかけます。
- ご遺族に一礼して戻る最後にご遺族に一礼し、席に戻ります。
【ポイント】
- 献花のお花は、ご遺族や葬儀社が用意してくれるものなので、参列者が自分で用意する必要はありません。
- 作法に不安がある場合は、係の方の指示に従うか、周りの方の様子を見て行うと良いでしょう。
3. 葬式の花を選ぶ際の注意点：蘭以外の選択肢とマナー
蘭の花が葬儀の場にふさわしいお花であることをお伝えしてきましたが、それ以外にも、さまざまな選択肢があります。
故人様の人柄や、ご遺族のお気持ちに合わせて、最適なお花を選ぶことが大切です。
ここでは、蘭以外の代表的なお花と、葬儀の花を選ぶ際の注意点について解説します。
3-1. 葬儀でよく使われる蘭以外の花
- 菊（キク）花言葉：「高貴」「高潔」「清らかな愛」古くから仏事には欠かせないお花で、長持ちすることから、お供えの花として最も一般的です。白い菊は、故人様への尊敬と敬意を表すのにふさわしいお花です。
- 百合（ユリ）花言葉：「純粋」「威厳」「無垢」白い百合は、その荘厳な美しさから、キリスト教式の葬儀でよく用いられます。しかし、香りが強いため、ご葬儀の形式や、ご遺族のお気持ちによっては避けた方が良い場合もあります。
- カーネーション花言葉：「無垢で深い愛」「清らかな愛」白いカーネーションは、母の日の花としても有名ですが、弔事にも適したお花です。キリスト教式では、白いカーネーションが献花として使われることもあります。
3-2. 葬儀で避けるべき花
故人様への想いを込めてお花を選びたい気持ちは分かりますが、葬儀の場にふさわしくないお花もあります。
マナー違反にならないよう、以下の点に注意しましょう。
- 毒のある花：彼岸花や水仙など、毒を持つお花は避けるべきです。
- 香りが強すぎる花：香りの強いお花は、故人様や参列者に不快感を与える可能性があります。
- トゲのある花：バラなど、トゲのあるお花は、故人様やご遺族への配慮として避けるべきとされています。ただし、最近ではトゲを取り除いて使われることもあります。
- 派手な色合いの花：赤やオレンジなど、派手すぎる色のお花は、ご葬儀の厳粛な雰囲気を損なうため避けるべきです。白や淡いピンク、淡い黄色、淡い紫など、落ち着いた色合いを選びましょう。
【ワンポイントアドバイス】
故人様が特定の色の花や、特定のお花を好きだった場合は、ご遺族に相談して、そのお花をご葬儀で使うことも可能です。
ご遺族が「故人らしいお葬式にしたい」と望む場合は、マナーを第一に考えるよりも、故人様への想いを大切にすることが優先されることもあります。
4. 葬式後の供養：お花を長く楽しむためのヒント
ご葬儀が終わった後も、故人様を想う気持ちは続きます。
ご葬儀で飾られたお花を、どのように扱うべきか悩む方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、ご葬儀後のお花との向き合い方について、いくつかのヒントをお伝えします。
4-1. お仏壇にお供えするお花
ご葬儀で飾られた蘭の花は、その花もちの良さから、ご自宅のお仏壇に飾るのに最適です。
お仏壇にお供えする際は、以下の点に注意しましょう。
- 水やりを欠かさない：鉢植えの蘭の場合は、水やりを忘れずに行いましょう。
- 日当たりと風通しの良い場所に置く：直射日光を避け、風通しの良い場所に置くことで、より長くお花を楽しむことができます。
故人様との思い出が詰まったお花が、ご自宅でも故人様を見守ってくれているようで、ご遺族の心を癒してくれるでしょう。
4-2. 弔事後の贈りものに添えるお花
ご葬儀の後、お世話になった方へのお礼として「香典返し」を贈ることが一般的です。
香典返しは、いただいた香典へのお礼だけでなく、無事に四十九日を迎えられたことの報告という意味合いもあります。
この香典返しに、故人様を偲ぶお花を添えて贈る方もいらっしゃいます。
その際は、派手な色合いのお花は避け、白や淡い色のお花を選ぶようにしましょう。
ここで少し、香典返しについて触れておきましょう。
香典返しは、急なご不幸の中で、悲しみと向き合いながら手配を進める必要があります。
「何を選んだらいいのか分からない」「失礼のないようにしたいけれど、時間がない」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
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5. 葬式の準備で知っておきたいこと：蘭を贈る前に
ご葬儀は、突然訪れるものです。
そのため、十分な準備ができないまま、さまざまな手配をしなければならないご遺族が多いのが現実です。
ここでは、いざという時に慌てないために、ご葬儀の準備で知っておきたいことを、私の経験を交えてお伝えします。
5-1. 葬儀社選びの重要性
ご葬儀は、一度きりの大切な儀式です。
故人様との最後の時間を穏やかに過ごすためにも、信頼できる葬儀社を選ぶことが最も重要です。
しかし、突然の訃報に接した際、短時間で葬儀社を決めなければならないことがほとんどです。
「本当にこの葬儀社で良いのだろうか？」 「費用は適正なのだろうか？」
そんな不安を抱えるご遺族を、私はこれまで数えきれないほど見てきました。
だからこそ、事前に情報を集めておくこと、そして、複数の葬儀社を比較検討することが大切です。
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悲しみの中で、不慣れな手続きに追われるご遺族にとって、信頼できる葬儀社を見つけることは、何よりも心の支えとなります。
5-2. 葬儀の服装：マナーを守って参列する
ご自身がご遺族ではない場合でも、ご葬儀に参列する機会は訪れるものです。
その際、故人様やご遺族に失礼のないよう、正しい服装で参列することが大切です。
ご葬儀の服装は、男性であればブラックスーツ、女性であればブラックフォーマルが基本です。
しかし、突然の訃報で「手持ちの喪服がない」「サイズが合わなくなってしまった」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
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5-3. 葬儀後の遺品整理
ご葬儀が終わった後、ご遺族が直面するのが「遺品整理」です。
故人様の思い出の品々を前に、何から手をつけて良いか分からず、途方に暮れてしまう方もいらっしゃいます。
また、遠方に住んでいるため、なかなか遺品整理に着手できないというご遺族も多いです。
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悲しみの中で、一人で抱えきれないお悩みがあれば、専門家に相談してみるのも一つの選択肢です。
6. まとめ：蘭の花に込める想いと、後悔しないお別れのために
この記事では、葬儀の場における蘭の花について、その意味やマナー、そしてご葬儀全般に役立つ情報をお伝えしました。
蘭の花は、その花言葉や花もちの良さ、品格のある美しさから、故人様への深い想いを託すのにふさわしいお花です。
しかし、何よりも大切なのは、故人様との最後の時間を、心穏やかに過ごすことです。
お花選びに悩んだり、ご葬儀の準備に戸惑ったりした時は、一人で抱え込まず、プロに相談することも大切です。
「家族を想うお葬式ガイド」では、これからも、ご葬儀やお墓、終活に関する情報を、わかりやすく丁寧にお伝えしていきます。
「後悔しないお別れ」のために、今できる準備を一緒に考えてみませんか？
あなたやご家族の未来が少しでも安心に近づくよう、心を込めて情報を発信していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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