はじめに|「釣りくらい、行ってもいいのかな?」という迷い
こんにちは、Keisukeです。
私はかつて12年間、葬儀社でプランナーとして働いており、数百件以上のご葬儀に携わってきました。
葬儀を終えたあと、よくご遺族から次のような質問をいただくことがあります。
「主人が亡くなったんですが、釣りが趣味で。月命日が近いけれど、出かけてもいいんでしょうか?」
「まだ四十九日前ですが、釣り仲間に誘われて…行くのは不謹慎でしょうか?」
「海を見るだけでも気分転換になるのですが、周囲の目が気になって…」
このように、趣味である「釣り」を再開する時期について悩む方は少なくありません。特に釣りは、早朝から一人で出かけることも多く、残された家族や親族の目が気になるという声もあります。
この記事では、釣りを再開するタイミングやマナーについて、以下の観点から詳しく解説していきます。
- 四十九日までは控えるべき?地域の風習と実際の差
- 家族や親族への気遣いと、その伝え方
- 気分転換としての釣りの効用
- 「不謹慎」の境界線はどこにあるのか?
- 実際のご相談事例と葬儀プランナーとしてのアドバイス
大切なのは、「誰のために」「どんな気持ちで」釣りに行くのかということ。
そして何より、あなた自身の心の整理や、体と心をいたわる時間として釣りをどう位置づけるかです。
1. 釣りは喪中に行ってはいけない?という素朴な疑問
「身内が亡くなったのに釣りなんて不謹慎だろうか」
「悲しみの中で趣味を楽しむなんて、非常識と思われるのでは…」
こうした思いから、釣り好きな方でも葬儀の後しばらくは、趣味を控える方が多いものです。
実際、喪中という言葉には、「亡くなった方を偲び、日常生活の一部を慎む期間」という意味合いがあります。特に四十九日までは“忌中”とされ、慶事を避ける、派手な行動を控えるという考え方が一般的です。
では、“釣りに行く”ことは、これに反しているのでしょうか?
1-1. 法律や明確なルールは存在しない
まずお伝えしたいのは、「喪中だから釣りに行ってはいけない」という法律上の決まりは存在しないということです。
仏教や神道など宗教的な価値観の中には、忌中の行動に一定の制限を設けているケースがありますが、釣り自体を明確に禁じている教えはほとんどありません。
ただし、問題になるのは「周囲の受け止め方」や「ご自身の心の準備」です。
1-2. 一番多いのは“自粛する空気”に悩むケース
実際の現場でも、ご遺族が口にするのは、
- 「近所の人が見たらどう思うか気になる」
- 「義父(義母)から“そんな時に釣りなんて”と叱られそう」
- 「家族に申し訳なくて気が引ける」
という“空気への配慮”が圧倒的に多いのが実情です。
この背景には、かつての日本社会に根強くあった「喪に服す」という価値観があります。
それは決して悪いことではありませんが、時代とともに個人の感情や価値観も多様化しています。
自分だけが我慢すればいい…と気持ちを押し殺してしまうと、かえって心の負担が大きくなり、のちのち気持ちの整理がつかなくなるケースも見受けられます。
2. 四十九日まで釣りを控えるべき理由とは?
釣りに限らず、葬儀後しばらくは「なるべく静かに過ごすべき」という意識を持つ方が多いのではないでしょうか。その代表的な区切りが「四十九日」です。
では、なぜ四十九日までは趣味や遊びを控えるべきとされているのでしょうか?
ここでは、宗教的な背景と現代における意味合いの両面から解説します。
2-1. 仏教における「四十九日」の意味
仏教の教えでは、人が亡くなったあと、その魂は「中陰(ちゅういん)」という期間に入るとされます。
この期間は49日間あり、亡くなった方は冥土への旅の途中にあり、7日ごとに審判を受け、49日目に次の世界(成仏・来世)へ向かうと考えられています。
つまり、四十九日は単なる日数の節目ではなく、「魂が旅立つ重要な日」であり、ご遺族にとっても「故人を偲び、現実を受け入れていく大切な時間」とされているのです。
そのため、この期間中はできるだけ静かに過ごし、故人との別れを受け止めることが良しとされてきました。
2-2. 派手な行動=“不謹慎”と捉えられる理由
釣りそのものが悪いわけではありませんが、
- 仲間との賑やかな釣行
- SNSなどへの釣果報告
- 長時間の外出
といった行動が、外部の人の目に触れると「軽んじている」「悲しみに浸っていない」と受け止められるリスクがあります。
これは特に、親戚やご近所づきあいの多い地域で顕著です。
つまり、「不謹慎と思われるかも」という不安は、多くの場合「自分の気持ち」ではなく「他人の目線」から来ているのです。
2-3. 現代では“心の整理”を重視する考え方へ
とはいえ、現在では「四十九日まで静かに」という慣習も、ある程度柔軟に解釈される傾向にあります。
現実的には、
- 心身のバランスを保つために、少しの外出はむしろ必要
- 故人との思い出に向き合う時間として、釣りを活用する
- 生活のリズムを取り戻すための第一歩として釣りを再開する
というように、「自分のための時間」として再開する人も増えています。
たとえば、釣りが趣味であった故人の誕生日に、思い出の釣り場に静かに足を運ぶ方もいました。その行動は、けっして「娯楽」ではなく、「祈り」だったように感じられました。
3. 地域差と世代間ギャップに注意しよう
「釣りぐらい、そんなに気にしなくても…」と感じる人がいる一方で、「まだ四十九日も明けてないのに出歩いて…」と眉をひそめる人がいるのも現実です。
これは、「釣り=趣味=娯楽」と見られるからこそ起こる感覚のズレ。
では、なぜそのようなズレが生じるのでしょうか?
その背景には、地域性と世代間ギャップが深く関係しています。
3-1. 地域によって大きく異なる「喪中」の感覚
日本では、地域ごとに葬儀の風習や“常識”が驚くほど異なります。
たとえば:
地域 | 葬儀のしきたりの例 |
---|---|
東北地方 | 四十九日まではほぼ外出せず、毎日仏壇に手を合わせる |
関西地方 | 初七日や三十五日で区切りをつけ、日常生活に戻ることを良しとする |
九州地方 | 葬儀後すぐに親族が集まり“精進落とし”で食事会をすることも |
これらはあくまで傾向ですが、「この地域では普通のこと」が「別の地域では非常識」とされることもあるのです。
つまり、釣りに出かけることが問題になるかどうかは、どこに住んでいるかで変わるということでもあります。
3-2. 高齢世代ほど“ケジメ”を重視する傾向に
加えて、世代間でも「喪中の過ごし方」に対する認識には差があります。
- 60代以上の方:儀式的な意味を大切にし、「四十九日が終わるまで遊びごとは控えるのが常識」と考える人が多い
- 40代以下の世代:形式よりも気持ちを重視し、「気持ちの整理ができたなら、日常に戻るのもアリ」と考える傾向が強い
とくに釣りのようなアウトドア趣味は、「釣り仲間」「地域のつながり」「SNSへの投稿」など、周囲に見える形で行動が伝わるため、年配者からの目が気になるケースが多くなります。
3-3. トラブル回避のコツは「事前の一言」
こうした誤解や批判を避けるために大切なのは、行動の前に“ひとこと断っておく”ことです。
たとえば、
- 「少し気分転換に海へ行ってきます」
- 「釣り好きだった父の供養も兼ねて、静かに糸を垂れてきます」
という言い方であれば、誤解を生まずに済むことも多いです。
つまり大事なのは、「釣りに行く」こと自体ではなく、「どう伝えるか」という点なのです。
3-4. 自分自身が後悔しない選択を
もう一つ、忘れてはいけない視点があります。
それは、「自分自身が後から後悔しないか?」という問いです。
- もし、外出中に親族から厳しい言葉をもらったらどう思うか?
- 「あの時、我慢していれば…」と心に残らないか?
その答えが「大丈夫」と思えるなら、少しずつ日常に戻るのも良いと思います。逆に、「やっぱり不安だ」と感じるなら、無理して出かける必要はまったくありません。
4. 故人を偲ぶ“釣り供養”という選択肢も
葬儀後、「趣味の釣りを控えるべきか」と悩む一方で、ある方々は釣りを**“故人を偲ぶ時間”として大切にしている**ことをご存じでしょうか。
それが、「釣り供養」という考え方です。
決して形式ばった供養ではありません。
“海を見ながら父を思い出す” “一緒に行った磯で静かに竿を出す”――そんな自然な供養の形が、心の整理や前向きな一歩につながることもあるのです。
4-1. 「釣りが大好きだった父」の思い出
実際に、私が葬儀をお手伝いしたあるご家族の例をご紹介しましょう。
70代で亡くなられたお父様は、若いころから地元の堤防釣りが大好きで、定年後は毎週のように海へ通っていたそうです。
葬儀後、息子さんがぽつりとこうおっしゃいました。
「なんか…釣りに行くのが怖いんです。父がもういないって、痛感しそうで」
しかし、四十九日を過ぎたころ、彼は意を決してひとりで竿を持ち、父が好きだった防波堤へ向かいました。
釣果はゼロ。でも、「父がここにいたな」「あの時の会話、覚えてるな」と、涙が止まらなかったそうです。
「不思議と帰り道は、少しだけ心が軽くなってました」
と、後日報告してくれました。
4-2. 自然の中でこそ湧き上がる感情がある
静かな海の音、穏やかな風、ゆっくり流れる時間。
そうした自然の中で過ごすことそのものが、心の整理にはとても大切なことです。
釣りは決して「娯楽」だけではありません。
孤独を癒し、思い出をたどり、心を整える時間でもあります。
たとえ周囲が「喪が明けてないのに釣り?」と誤解することがあったとしても、あなた自身が故人を想っての行動であるなら、それは“供養”として十分な意味を持つのです。
4-3. 気持ちを形にするための「準備」も大切
そのうえで、もし「本当に釣りへ出かけよう」と思ったときは、身だしなみにも気を配りたいものです。
特に、葬儀後間もない時期は、地域や近所の目も気になるもの。
ふいに会う人が「あれ?こんな時期に釣り?」と感じることがないように、落ち着いた色味の服装や、礼を尽くした振る舞いは心がけたいところです。
そういった意味でも、突然の弔事に備えて、マナーを重んじたフォーマルウェアを手元に用意しておくのは、精神的にも安心材料になります。
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4-4. 「一人釣り」から見えてくる、これからの生き方
葬儀後に釣りへ出かけることは、決して「不謹慎な行動」ではありません。
むしろ、一人で海と向き合うことで、故人との対話を重ねることができる――そんな時間でもあるのです。
「父だったら、今なんて言うだろう」
「母が好きだったあの岩場、今年も魚いるかな」
そういった思い出を胸に竿を出す時間は、あなたの“これからの人生”にとって大きな力になります。
5. 釣りの再開前に「家族との対話」も忘れずに
葬儀後の釣りの再開は、あなた自身の心の整理に役立つ一方で、ご家族や親族の気持ちも尊重したいものです。
ここでは、円満に趣味を再開するための「家族との対話」のポイントをまとめます。
5-1. 「なぜ釣りに行きたいのか」を率直に話す
まずは自分の気持ちを正直に伝えましょう。
たとえば、
- 「気分転換のために少し海に出たい」
- 「故人を想いながら釣りをしたい」
- 「心身の健康のために必要」
こうした言葉を伝えることで、家族の理解が得られやすくなります。
5-2. 家族の不安や反対意見も丁寧に受け止める
一方で、ご家族が心配や反対の意見を持つことも自然なことです。
- 「まだ悲しみが癒えていないのでは?」
- 「近所の目が気になる」
- 「急に外出されると心配」
こうした声を受け止め、気持ちを共有することで誤解を防ぎます。
5-3. 再開のタイミングを一緒に決めるのも効果的
場合によっては、「四十九日を過ぎてから」「月命日を迎えてから」など、区切りを家族と相談して決めるとよいでしょう。
皆が納得する時期を共有できると、心置きなく趣味に集中できます。
5-4. 短時間・日帰りの釣行から始めてみる
最初は長時間の釣りではなく、短時間や日帰りの釣行にしておくのもおすすめです。
急な体調変化や、家族の連絡もすぐに取れるため安心感があります。
5-5. 事前に「釣りの予定」を共有しておく
釣りに行く日時や場所を家族に知らせておくことで、いざというときに安心してもらえます。
また、家族側も予定を把握しやすくなるため、無用な心配が減ります。
5-6. 家族と一緒に釣りに行くのも良いかもしれません
もしご家族の理解が得られたら、ぜひ一緒に釣りに行くのも良いでしょう。
共通の趣味として新たな思い出を作り、心の距離を縮めるきっかけになります。
葬式後の釣り再開は「心の整理と周囲への配慮」が大切【まとめ】
葬式の後、趣味の釣りを再開するタイミングや注意点について解説してきました。ポイントを改めてまとめます。
- 四十九日までは一般的に「忌中」とされ、釣りを控えるケースが多い
宗教的な意味合いや周囲の目を考慮し、静かに故人を偲ぶ期間とされているためです。 - ただし、法律や明確な禁止ルールはないため、心の準備や周囲の状況によっては早めに釣りを楽しむ方もいます。
- 地域や世代によって喪中の過ごし方の感覚は異なるため、近隣や親族の考え方を尊重しながら行動することが大切です。
- 釣りを「故人を偲ぶ供養の時間」として捉える考え方もある
静かな海や川で故人を思いながら過ごすことで心の整理に繋がる場合もあります。 - 釣りの再開前には家族としっかり話し合い、理解を得ることが安心につながる
短時間の釣行から始めるなど、配慮を忘れずに。
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葬式後の「釣り」と向き合う心の準備を大切に
喪中の釣り再開は、単に「遊びをする」というよりも、心の整理や故人への思いをどう形にするかが重要です。
周囲とのコミュニケーションも怠らず、あなたとご家族が納得できるタイミングで、ゆっくり釣りを楽しめる日が来ることを願っています。
▼喪中のマナーや葬儀の流れ、香典返しについても詳しくまとめています。
よろしければこちらもご覧ください。
筆者プロフィール:
Keisuke(けいすけ)|元葬儀社プランナーの終活ブログ運営者
葬儀現場で800件以上の経験を持ち、ご遺族の不安や疑問をわかりやすく解説。
家族を想うお葬式のあり方を日々発信しています。